ACTIVITY

公開質問状に対する回答

本日「すみつなぐ高時川」という団体から公開質問状をいただきましたので、HPにて回答させていただきます。同様の内容の回答は同会宛にメールさせていただきました。なお、回答を当方でも公開するのは編集による齟齬が生じるのを防ぐためですので、御承知いただければと思います。

当該案件に関する私の意見は次の通りです。

(高時川の豪雨被害によるFact)

2022年8月4日から5日にかけての豪雨で、長浜市北部・福井県境付近を中心に線状降水帯が発生し、時間雨量約90mm、累計雨量305mmの雨が降り、高時川流域では氾濫や浸水被害が発生しました。

その後、高時川上流域から流出した土砂により、高時川の濁りが長期化・断続化しており、滋賀県も「高時川濁水対策連絡調整会議」や有識者を含む検討会議を設け、原因調査と対策を進めています。

影響として、特にアユの産卵・漁業、農業用水、観光、地域生活への支障が指摘されており、滋賀県議会資料でも、遊漁の営業休止、アユ産卵数の減少、用水路の泥上げ、揚水ポンプの故障、キャンプ場の集客減、景観悪化などが挙げられています。

また、長浜市議会の意見書案では、姉川河口付近のアユ産卵数が、令和3年(8月から11月)の65.8億粒から、令和4年は8.1億粒へ大幅に減少したとされ、漁業・生態系への深刻な影響が報告されています。その対策として、土砂を下流に流さないための堰堤整備、崩壊斜面の固定、緑化、浸食された河岸の簡易護岸、アユ産卵流域での泥払いなどが検討・実施対象として示されています。

2025年11月時点で滋賀県は「現在に至るまで濁りが断続的に続いている」とし、令和7年度の検討会議の継続開催をしており、この問題は完全終息した訳ではなく、継続的な監視と対策が必要な地域課題だとされています

(大規模風力発電についての意見)

公開資料で確認できる風力発電事業は、GPI(株式会社グリーンパワーインベストメント)の「(仮称)余呉南越前第一・第二ウィンドファーム発電事業」で、経産省資料では、所在地は滋賀県長浜市余呉町および福井県南条郡南越前町、出力は第一84,000kW・第二79,800kWとされています。(トータル163,800kW)
ここで知っておいてほしい事実ですが、163,800kWがどの程度が分からなければ、このプラントの必要性について議論するのは困難と思われるため、その規模感を示します。
関西電力の例では、御坊発電所は合計120万kW、姫路第二発電所は合計291.9万kWなので、163,800 kWは大型火力発電所全体よりはかなり小さく、火力発電所の1ユニット未満〜中規模ユニット程度と見ると分かりやすいです。

火力発電で言うと、163,800 kWは小〜中規模の火力発電設備、または大型火力ユニットの一部に相当します。発電量としては、24時間運転で約393万kWhです。
原子力発電でいえば、日本の原発1基はおおむね数十万〜100万kW級なので、163,800 kWは100万kW級原発の約6分の1です。つまり「原発1基分」ではなく、原発1基の一部に相当する出力です。
まとめると、163,800 kWは都市や大規模工場群を支えられる程度の電力ですが、大型火力・大型原発の1基分よりはるかに小さい発電規模ということになります。

滋賀県の資料では、対象事業実施区域は約830ha、改変面積は約57ha、風車は4,200kW×39基、最高到達点188mと整理されています。つまり、39基の風力発電が並ぶことになります。
そして、ベルク余呉スキー場跡地については、滋賀県の公聴会資料からも「ベルクスキー場跡地からさらに南の尾根筋についても設置が予定されています」との発言が記録されており、また別資料でも「本発電計画における設備設置の中心地帯ともいえる旧ベルクスキー場跡地」という表現も確認できるため、旧ベルク余呉スキー場跡地が計画区域の重要地点として扱われることになるでしょう。

この点が高時川の長期濁水問題と結びついて懸念されることになるのでしょう。その理由は、2022年8月豪雨後、旧ベルクスキー場跡地周辺で斜面崩壊や土砂流出があったためです。公聴会資料でも、豪雨後の高時川の濁水が100日を超えていたこと、ベルクスキー場跡地の崩壊状況が「大規模」と表現されています。
そのため、この計画が単なる再エネ導入の是非だけではなく、高時川源流域の土砂流出、濁水、森林保水力、集落下流への水害リスク、アユを含む生態系への影響をどう評価するかが大きな争点になるといえます。
環境省も2023年の環境大臣意見で、土地改変の最小化、クマタカ・イヌワシ、ブナ林などへの影響を踏まえた「抜本的な事業計画の見直し」を求めていることを考えると、環境負荷は大きいといえます

さて、これを長浜市の課題として整理するなら、「再エネ推進か反対か」ではなく、流域防災・水環境・住民合意・地域経済を一体で見る必要があり、もっとも重要な点は、高時川流域の安全・水環境・地域合意をどう守るかということに尽きます。

ここで長浜市の主な課題を整理すると、

1. 高時川の濁水・土砂流出リスク
最大の課題は、2022年8月豪雨後に続いている高時川の長期濁水問題との関係です。環境大臣意見でも、この事業について「土地の形質変更に伴う土砂流出による下流の河川環境への影響」が懸念されており、計画地が高時川源流域に近いことから、道路造成、風車ヤード造成、送電線工事などが新たな土砂流出を招かないかが重要です。

2. 防災・治水上の不安
余呉地域は急峻な山地が多く、豪雨時の斜面崩壊や土石流の危険性が現実の問題になっています。旧ベルク余呉スキー場跡地周辺も含む山地で大規模な土地改変が行われる場合、下流の中河内、余呉町内、高時川沿い集落にとって、災害リスクの増加がないかを豪雨後のデータで検証する必要があります。

3. 琵琶湖・アユ・漁業への影響
高時川は姉川を通じて琵琶湖につながる重要な水系です。濁水や細粒土砂の流入は、アユの産卵床、河床環境、琵琶湖の水質にも関係します。
環境大臣意見でも、令和4年秋にアユの産卵数が著しく減少したことが触れられており、河川環境への影響は琵琶湖全体の問題になります。

4. 希少猛禽類・ブナ林など自然環境への影響
計画地周辺では、イヌワシ、クマタカなどの希少猛禽類、ブナ林などの重要な自然環境への影響が指摘されています。
環境省も、再生可能エネルギー導入の必要性を認めつつも、地域との共生、環境配慮、関係法令の遵守が必要だとしています。

5. 景観・観光・地域イメージへの影響
尾根に高さのある風車が多数建設される場合、余呉・湖北地域の山並み景観が変化します。これは観光、自然体験、地域ブランドにも影響します。
環境大臣意見でも、尾根上の風車建設による景観影響が懸念事項として挙げられています。

6. 住民への情報提供と合意形成
事業者資料では、計画は滋賀県長浜市余呉町と福井県南越前町にまたがるもので、最大出力は第一・第二を合わせて約16万kW規模です。周辺地域への影響を考慮すると、地元余呉町中河内地区だけでなく、高時川下流域の農業者、漁業関係者、観光関係者、そして、長浜市民全体への説明が必要です。しかし、この問題を知らない市民の方が多数を占めるのではないでしょうか?

市は、以上のような理由から、次の点を明確にすることが必要です。

第一に、高時川の濁水問題が解決していない段階で、源流域の大規模開発を認めるのか。認めるのであれば、地域住民や影響を受ける産業関係者との合意形成は現時点でどうなっているのか?

第二に、事業者の環境影響評価が、豪雨後の地形変化・土砂流出・斜面崩壊リスクを十分に反映しているのか。つまり、豪雨後の環境アセスメントは再評価されているのか?
検索する限りでは、準備書の届出・縦覧後に高時川の長期濁水を引き起こした2022年8月豪雨が発生しており、準備書段階の主要な調査・評価は、豪雨後の大規模な斜面崩壊や濁水問題を十分に反映していない可能性がある。このため、市側から見れば「環境アセスは実施されたか」だけでなく、2022年8月豪雨後の状況を踏まえてアセスメントのやり直し・追加調査が必要ではないか?

第三に、長浜市として「ゼロカーボン政策」と「流域の安全・琵琶湖の保全」を両立させる市の基準を持っているのか。

結論として、この事業は長浜市にとって、再生可能エネルギー政策、流域治水、琵琶湖保全、山村振興、住民自治が交差する重大な地域課題です。

特に高時川の濁水問題が続く中では、「環境アセスを通ったか」だけでは不十分で、豪雨後の現地状況を踏まえた再評価と、地域住民以外に長浜市民全員に開かれた説明が不可欠だと思います。