ACTIVITY

湖北病院建て替え計画についての懸念

先日の協議では、湖北病院建て替え計画について一定の合意が得られたと聞いています。

合意内容は、新病院は、一般病床(地域包括医療病棟)48床、慢性期病床44床の計92床となる計画です。

しかし、本来の湖北病院の許可病床は140床です。現在は看護師など医療スタッフ不足のため病棟を一部休止し、実際の運用は117床となっています。

「湖北病院・湖北やすらぎの里施設整備基本構想・基本計画」では、140床から120床への再編が前提とされていました。
しかし今回示された計画では、そこからさらに92床へ縮小されています。
これは、基本計画で示された120床から見ても28床、現在の許可病床140床から見れば48床減、現在稼働病床117床から見ても25床減となります。さらに、湖北やすらぎの里も84床から60床へ縮小されるため、医療・介護を合わせた受け入れ枠として単純計算で72床分減ることになります。

受け皿不足はすでに現実に起きている

現在でも、長浜赤十字病院や市立長浜病院など、急性期病院を退院した後の受け皿は不足しています。

その結果、

周辺地域への流出: 湖北地域で受け入れ先が見つからず、岐阜県養老地域や滋賀県南部の病院へ転院せざるを得ない。

介護現場の負担増: 老健や特養などの介護施設では、本来より医療依存度・介護度の高い利用者が増えており、ケアスタッフの負担も年々増大している。

家族の負担: 遠方での入院・入所となるため、家族の面会や付き添いの負担が大きくなっている。

という状況が現実に起きています。

さらに、湖北病院で受け入れているレスパイト入院(在宅介護の休息のための入院)についても、ベッドが満床で受け入れできず、必要時に利用できないケースが少なくありません。特に冬季は1ヵ月以上待つこともあります。

病床削減が先行すると「医療・介護難民」が生まれる
今後、湖北病院・湖北やすらぎの里施設整備基本構想・基本計画の120床よりさらに病床が92床まで減れば、この約30床分の患者さんはどこで受け入れるのでしょうか?

加えて、併設の老健施設「湖北やすらぎの里」の入所者数も、従来の84床から60床程度へ削減される方針が発表されました。

病院病床と老健の定員を合わせると、140床基準では72床減、基本計画基準では52床減となり、その影響が地域医療・介護にどの程度及ぶのか、十分な検証が不可欠です。

受け皿となる介護施設や在宅医療体制が十分整備される前に病床だけを削減すれば、入院先も転院先も見つからない「医療・介護難民」が増えることが強く懸念されます。

家族構成の変化(社会的入院の必要性)も考慮すべき
現在長浜市、特に北部では、
老々介護世帯
高齢者のみの世帯
独居高齢者
が急増しています。

医学的には必ずしも入院が必要ではない患者さんであっても、「家族が介護できない」「日中支える人がいない」「在宅生活が維持できない」「免許返納により通院手段がない」という社会的理由で入院が必要になるケースは少なくありません。

急性期病院である長浜赤十字病院や市立長浜病院がその役割を担うことは困難であり、本来その受け皿となることこそが湖北病院の役割だったはずです。

病床数に応じた施設計画・事業費になっているのか?
もう一つ懸念されるのは建設計画の妥当性です。当初は約117億円規模で検討されていたものが、現在では約70~90億円程度に縮小されたと聞いています。
昨日示された数字を見ると、当初より大きく縮小されたことで「十分にコスト削減された」という印象を受けます。

しかし、これは心理学でいう「アンカリング効果」(この効果について前回のInstagram投稿で解説していますが、最初に提示された数字や情報が記憶に残り、その後の判断が無意識のうちにゆがめられてしまうことです。)によってそう感じている可能性もあります。
重要なのは最初の数字との比較ではなく、「92床という病院規模に対して、本当に必要な施設規模・建設費になっているのか」という視点で改めて検証することです。

さらに、今回の計画縮小では、2006年竣工の既存別館を最大限活用することが事業費圧縮の理由とされています。
ただ、築20年(2026年時点)が経過している別館の活用は、一見エコに見えますが、医療動線の分断(新築棟との接続問題)や、今後数十年にわたる維持管理費の二重発生というリスクを孕んでいます。初期投資(イニシャルコスト)の削減が、将来の維持費(ランニングコスト)を逼迫させないか大きな懸念が残ります。

最後に:行政が示すべき「将来の全体像」とは?
湖北病院は単独の病院ではなく、湖北地域全体の地域包括ケアを支える中核病院です。
病床削減そのものが目的になってはなりません。最も重要なのは、地域住民が安心して医療や介護を受けられる体制を維持できるか否かです。

病床を減らすのであれば、その前提として、受け皿となる介護施設、在宅医療、訪問看護などの具体的な整備計画をセットで示すことが不可欠です。

事実、湖北病院が本来の140床ではなく120床で運営せざるを得ない背景には、看護師をはじめとする「医療スタッフの深刻な不足」があります。


行政側は「病床を減らせば人員に余剰が出る」と言い張るかもしれません。
しかし、仮に最も手厚い配置基準である急性期病棟(7:1配置)で30床減らしたと仮定しても、発生する余剰職員は12名程度と予想されます。これだけの人員で、広大な湖北地域の24時間体制の訪問・在宅医療事業を補完することなど到底不可能です。
つまり、余剰スタッフが在宅をカバーできるという強弁は成り立ちません。

そして、スタッフ不足を理由に病床を減らすのは本末転倒です。
むしろ、魅力ある職場環境や住環境の整備など、行政として「医療スタッフを地域に呼び込み・定着させる施策」にどれだけ投資する計画があるのか、その具体策こそ先に見せるべきではないでしょうか?

地域医療を維持するためには、財源不足を理由にした「病床削減ありき」の計画ではなく、医療・介護・在宅医療・人材確保を一体として整備する将来像を示すことが必要です。
その全体像が示されないまま病床だけを減らすことが、本当に地域住民の安心につながるのか、具体的かつ徹底的な検証を求めます。

具体的検証としては、
1 減床される病床(最大48床)および老健(24床)の利用者が、今後どの医療機関や介護施設に、いつまでに、どのような形で移行できると考えているのか?
数値目標を伴う「地域包括ケア移行計画」が必要です。

2 既存別館の活用について、新築棟との接続による医療・介護動線のロスがもたらす「運営コストへの影響」と、今後30年間の維持管理費(ランニングコスト)の試算を開示すべきでしょう。

3 看護師等スタッフ不足の本質的解決に向け、病床削減ではなく、「湖北地域への医療人材誘致・定着に向けた具体的施策と予算規模」を明確にすべきです。

このまま「削減ありき」で新病院の建設が始まれば、今後30年以上にわたり湖北地域の医療・介護に禍根を残すことにもなりかねません。

住民の安心を守るため、徹底的なデータの開示と検証を求めます。