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長浜病院の独立経営に関する考察
はじめに
市立長浜病院、湖北病院は、湖北地域の医療を支える重要な公共インフラです。
病院の経営再建は、単に赤字を削減することが目的ではありません。市民が安心して救急医療を受けられること、子どもが地域で診療を受けられること、女性が必要な医療にアクセスできること、そして高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられることを守るための取り組みです。
病院の経営を立て直すためことは、支出削減だけでなく、医療提供体制を充実させ、患者受入能力を高めることが必要です。
特に、小児科医師の常勤化を優先し、各診療科の小児患者受入れ、二次救急の受入れ能力、婦人科疾患への対応、地域の在宅医療との連携を段階的に強化することを提案します。
1.改善のための基本方針
4つを一体で進める
① 二次救急の受入強化 ; 受入可能な救急患者を最大限受け入れる
② 小児科の常勤化 ; 他科と連携し、子どもの診療機会を拡充する
③ 婦人科医療の充実 ; 分娩は地域で役割分担し、婦人科疾患に重点を置く
④ 地域・在宅医療との連携 ; 緊急入院の受皿と退院後支援をつなげる。患者受入れの回復・病床の有効活用・医師確保の好循環
「断らない救急」とは、すべての疾患や重症度に無条件で対応することではありません。二次救急病院として受入可能な患者を最大限受け入れ、対応困難な場合は三次救急機能をもつ長浜赤十字病院や専門医療機関へ迅速につなぐことも意味します。
2.小児科常勤化を再建の最優先課題に
小児科の充実は、小児科だけの問題ではありません。
小児科医の診療支援が十分でない場合、整形外科、耳鼻咽喉科、外科などでも、小児患者の診療や入院を制限しています。
こうした制限は、地域住民の利便性を損なうだけでなく、病院全体の診療機会を減少させる要因となります。
ここでは、小児科常勤医2名相当の体制を目指し、5年目に4名相当へ段階的に拡充することを計画仮定とします。(小児科医の確保の為に、現在の2大学に拘ることなく、その他の大学医局も含めインセンティブを伴う常勤医の募集条件設定することも必要になります。)
併せて、小児科医と他科医師の協働による診療基準を整備し、受入可能な疾患や年齢層を拡大します。
3.断らない二次救急の確立
救急搬送を受け入れる能力を高めることは、市民の安心につながると同時に、病院の入院機能を維持するためにも重要です。
目指すのは、救急車の受入件数を増やすことだけではありません。救急患者に対し、必要な検査、処置、手術、入院を適切に提供できる診療体制を整えることです。
救急搬送の追加受入件数を1日当たり4件程度、年間1,200~1,600件とする目標が無理のない妥当な計画です。
追加受入患者のうち入院が必要となる割合は地域によって異なりますが、20から40%程度で仮に25%と仮定すると、年間300~400件の新規入院につながります。
4.婦人科疾患に重点を置いた診療体制
婦人科については、分娩・周産期医療の機能を地域内で分担しながら、婦人科疾患の診療を充実させます。
対象として、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣疾患、更年期障害、婦人科がん検診、など婦人科系疾患を想定します。
5.地域診療所・在宅医療との連携
地域の診療所、訪問診療を行う医師、訪問看護ステーション、介護施設との連携を強化します。
在宅療養中の患者が急変した場合、適切な入院先を迅速に確保することは、地域医療にとって重要な課題です。診療所や在宅医療機関からの紹介・緊急入院の受付体制を整備し、治療後はかかりつけ医や在宅サービスへ円滑に戻れる仕組みを構築し、こうした取り組みを通じて、急性期医療、総合診療、在宅医療を実践的に学べる教育体制の充実も目指します。このような体制の確立が研修医や若手医師への魅力提供の一環となります。
6.病床の有効活用と段階的な再稼働
市立長浜病院の公表病院概要では、2025年9月30日時点で一般病床437床、療養病床104床、計541床が記載され、療養病床のうち52床が休床とされています。
休床をすべて一律に再開するのではなく、病棟の機能、看護配置、患者需要、採算性を調査したうえで、段階的な運用拡大を図ることが重要です。
7.今後の財務予測
財務目標は、昨年度の年間8億円の医業赤字を基準として、5年間で単年度医業収支の黒字化を目指すものです。
年間増収予測
| 収益改善施策 | 年間目標 |
| 二次救急の受入拡大 | 3.8億円 |
| 小児科と他科小児診療の拡充 | 3.2億円 |
| 婦人科疾患の診療充実 | 2.0億円 |
| 在宅連携・追加病床稼働・圏域拡大 | 6.0億円 |
| 合計 | 15.0億円 |
各区分は、同一患者・同一診療報酬を重複して計上しないことを前提とします
医師・看護師等の増員計画
現員からの追加確保を想定した計画仮定。実際の配置人数ではありません。
| 人員区分 | 初年度 | 5年目 |
| 小児科医 | 2名 | 4名 |
| 婦人科医 | 1名 | 2名 |
| 救急・総合診療医 | 1名 | 3名 |
| 看護師 | 5名 | 15名 |
| その他医療職・事務職 | 2名 | 5名 |
5年目には医師9名、看護師15名、その他5名の追加確保を想定します。
年間追加支出の計画
| 費用項目 | 5年目の年間支出 |
| 医師の追加人件費・採用費 | 2.3億円 |
| 看護師・その他職員の追加人件費 | 1.5億円 |
| 診療材料・薬剤・検査等 | 1.8億円 |
| 夜間運営・施設設備・委託等 | 1.0億円 |
| 教育研修・地域連携・その他 | 0.4億円 |
| 追加費用合計 | 7.0億円 |
年度別収支シミュレーション
単位:億円。基準年度の医業赤字▲8.0億円が一定の場合。各年度の金額は基準年度比の年間増分です。
| 年度 | 増収 | 追加費用 | その他改善 | 医業収支 |
| 2027年度 | 3.0 | 2.5 | 0.5 | ▲7.0 |
| 2028年度 | 6.5 | 4.0 | 1.0 | ▲4.5 |
| 2029年度 | 10.0 | 5.5 | 1.5 | ▲2.0 |
| 2030年度 | 13.0 | 6.5 | 2.0 | +0.5 |
| 2031年度 | 15.0 | 7.0 | 2.5 | +2.5 |
5か年間の医業収支改善シナリオ
単位:億円。
計画上は4年目に医業収支が黒字に転換し、5年目に2.5億円の医業黒字が可能です。
8.5年間の実施工程
2027年 1年目
診療体制の再構築
小児科医の確保、救急受入基準の見直し、婦人科機能の整備、在宅医療機関との協議を開始。病床別採算と追加患者需要を調査する。
2028年 2年目
救急と小児受入れの拡充
他科での小児診療を段階的に拡大し、救急の受入れ能力を高める。在宅医療からの緊急入院連携を本格化する。
2029年 3年目
病床活用と広域患者受入れ
患者需要を確認した病棟から運用を拡大。婦人科手術と救急入院の増加、紹介患者の受入れを推進する。
2030年 4年目
単年度医業黒字化を目指す
診療科別の収益、病棟別採算、追加人件費を継続検証。医業収支プラス0.5億円を目標とする。
2031年 5年目
経営の安定化と自立性の向上
医業黒字2.5億円を目標とし、設備更新、借入返済、医療人材の継続確保を含めた経営の持続性を評価する。
9.計画を実現するために必要なこと
本計画の実効性を確保するため、月次で次の指標を公表・検証することを提案します。
| 分野 | 主な管理指標 |
| 救急 | 救急要請件数、応需率、断り理由、緊急入院数 |
| 小児科 | 小児科医師数、他科の小児患者受入件数 |
| 婦人科 | 外来患者数、手術件数、入院患者数 |
| 地域連携 | 紹介件数、在宅患者の緊急入院件数 |
| 病床運営 | 稼働病床数、病床利用率、平均在院日数 |
| 人材確保 | 医師・看護師数、採用数、離職数 |
| 財務 | 医業収支、経常収支、給与費率、資金残高 |
10.結論 ― 市民に必要とされる病院を、将来に残すために
市立長浜病院の再建は、単純な病床削減や人員削減だけで達成できるものではありません。
必要なのは、地域で求められている医療機能を適切に回復し、医師と看護師が働き続けられる診療体制を整え、それを持続可能にすることです。
提案する中心的な取り組みは、小児科常勤化による他科を含めた患者受入れの改善、二次救急の受入れ強化、婦人科疾患への対応充実、地域診療所や在宅医療との連携です。
これらを病床の有効活用と結びつけることで、地域医療の充実と医業収支改善を目指します。
今後は、実際の診療実績と病院決算を用いて計画を精査し、経常黒字化と資金面での自立まで見通せる経営再建計画へ発展させることが必要です。
市民が安心して受診でき、医療従事者が誇りを持って働き、将来の世代にも必要な医療を残せる医療機関を残すことが重要です。
公開資料・参考情報
本提案は、市立長浜病院および長浜市、滋賀県が公表している次の資料を参照しています。
掲載上の注意:本稿は公式の病院経営計画ではなく、地域医療の充実と病院経営の再建に向けた独自提案です。財務目標・採用人数・患者増加目標は仮定を用いた試算であり、市立長浜病院または長浜市が承認した数値ではありません。
